チャイ5は、高2の音楽のスコアリーディングの曲で、
音友社の当時350円のスコアには、テスト対策でたくさんの書き込みがある。
この時のテスト、一問だけ間違えて98点(これは自慢)。
確かtuttiを総奏じゃなくて全奏とか間違えて書いた。
間違えた問題だけ覚えていて、あとはどんな問題だったか忘れた。
要するにスコアにあれこれ書き込むのが、好きだっただけの話で、
定期試験対策としては、英語とか数学とか物理をもっとちゃんとすべきであったろう。
音楽は最高点でも物理は赤点だった。
ということで、試験のために勉強した曲は強いもので、
チャイ5を聴くたびに、いろんなことを考えたり感じてしまう特別な曲。
今月も某オケで聴き、「秋を感じる」な~んて書いたりしていた。
さて、
9月22日(月)キタラでのウィーンフィル。
ムーティーお得意のロッシーニの「セミラーミデ」序曲に始まり、
ストラヴィンスキーの「妖精の口づけ」による交響組曲で、
ウィーンフィル奏者のそれぞれの妙技を堪能。
最後のチャイ5。
2楽章が始まるまでは、まあ上手い演奏には違いなぁ・・と思っていたところ、
ビオラのまくり方で、「あれ?」と思い始める。
3楽章、4楽章と進むにつれ、
「こうきたか」「こうするか」「こんなテンポありか」
と、次々にやられる。
今まで聞いたチャイ5の中では、最も変わった演奏。
マレーシアのオケやゲルギー&PMFの際には、
「チャイ5でオケの力量がわかる」とか、そういうことも書いたし、
4楽章のフレージングに聴き手を酔わせるマジックがある・・とか、
このブログには、そういうことも書いている。
今回は、これまでとはまた違ったことを感じる。
上手いチャイ5の演奏だったら、東○ィルあたり(ホントに上手い)。
fffからsfを経てpになったりする表現力は、もちろんオケの力量だし、
日本のオケは、そういうことはちゃんと出来て、つくづく上手い。
ところが、
ムーティーとウィーンフィルは、激しく裏切る。
第4楽章、第1主題。
ダウンボー4つ刻みの和音で始まる・・あのテンポはないでしょう。
まるで「ついて来い」という感じ。
そこで、ついていけるのが、ウィーン・フィル。
さすが・・・。
家に帰って、なつかしいスコアを見ながら、
クルト・マズア&ライプチヒ・ゲバントハウスのCDを聴いてみたら、
終盤でテンポをまくったりしていたから、
この曲、やろうと思えば、いろいろやれるんだなぁ・・というのもまた確認。
このブログを読み返してみると、ゲルギレフ&PMFの時は、
「オケのメリハリのつけ方は、さすがにゲルギレフ」と書いていた。
ムーティー&ウィーンフィルを聴いていて、つくづく感じたのは、
演奏は、そのとき、そのときの勝負、
まさに、ライブならでは一回きりの演奏。
CDで聴くウィーンフィルも、いいには違いないが、
この日の演奏がCDだったら、「ん?」だと思う。
絶対にCDにならない演奏だから、逆に面白い。
一昨年PMFでキタラにお目見えしたムーティー氏。
コンマスのキュッヒルさんはじめ、主席はおなじみのPMFのメンバー。
一期一会とはよく言うが、今回は、「やられた!」と思った。
確かにふくよかな響きがするし、目指すべき一つの頂点の音なのだから・・。
この音に文句をつけるんだったら、ベルリンを目指すのか、シカゴを目指すのか・・
という話にもなるだろうし。
最後まで聴いて、「上手い」という次元とは違う。
今年は、ウィーンフィルを歌舞伎の家元に例えて書いていた。
PMFのミニトークコンサートで、ウィーンフィルの各奏者の話を聞いていると、
濃密な徒弟制度のようなものを感じるところもあった。
この人たちの仲間意識はすごい。
人間として理解しあうという基本のところは徹底していそうだし・・。
「行間を読む」という表現もあるが、書いてないことは、読めない。
感じるしかない。
楽譜に書いてあることをなぞりつつも、さらにそこでどう表現するかによって、演奏は全く別のものになる。
当たり前のことだが、改めて痛感。
それをどう感じるか・・も、それぞれの聴き手側の感じ方。
ウィーンフィルは、ウィーン流の家元。
伝統芸能を同じように真似しようと思っても出来ないな。
一晩たって冷静に考えると、他は、別のものでいい。
オケもアマありプロあり、
アジアあり、アメリカあり、ヨーロッパあり、
日本あり、札幌ありでいいよ。
それぞれ、独自の音を追求していけばいい。
最後は、シュミードル氏がステージから去った。
誰もいないステージに再び現れたマエストロ。
満員の聴衆から大喝采をあびる。
ファンサービスもさすがのマエストロ。
キタラも全席満員になると、拍手のボリュームが違う。
爽快な裏切られ方をした。
さて、
今回は開演前に昔のオケ仲間にたくさん会う。
HrのOさん、指揮のEさん、ObのHさん、
ピアノのOさんはコバケンさんの指揮でモーツァルトのPCを東京で演奏した時に電話でお礼したきりだったので、改めてお礼を。
他にも客席には、地元アマオケで一緒にやっていた方々や、地元プロオケの方のお顔も・・・知っている顔がたくさん。
ちょっとしたお祭りの雰囲気だった