日曜日(1月16日)、新国立劇場のオペラトーク「ルル」に行ってきました。
芸術監督トーマス・ノヴォラツスキー氏、指揮者シュテファン・アントン・レック氏、
演出家デヴィッド・パウントニー氏の3人が、音楽面、演出面から、「ルル」像に迫る
会話を繰り広げました。
といっても、このオペラを取り巻くエピソードは、すでに色々なところで紹介されているお話。
2幕版、3幕版ともに指揮の経験のある指揮者シュテファン・アントン・レック氏は、2幕版
も完璧のように感じたが、3幕版を振り始めてからは、第3幕が絶対必要であると考える
ようになった・・とのこと。
演出家デヴィッド・パウントニーは、1~2幕と3幕が、ちょうど鏡に写したように対比関係
にある・・・と言っていました。
芸術監督トーマス・ノヴォラツスキー氏は、謎の多い登場人物「シゴルヒ」をどう分析する
かを演出家に振っていましたが、デヴィッド・パウントニー氏は、「シゴルヒはそれほど重要
な人物ではない」と語っています。作曲家の「アルヴァ」は、ベルク自身が反映されている
のではないか・・という考え方も、なるほど・・と思いました。
なぜ、ベルクの死後、未完成の3幕を補筆して上演する許可をベルク夫人が与えなかった
か・・・については、第3幕が、婦人の知らないベルク像を描いていることが、婦人としては
堪えらなかったのではないか・・という考え方も出ていました。
「ルル」を通して、様々な男性像が描かれています。演出家デヴィッド・パウントニー氏は、
「誰にでも5秒だけ本気になるルル」と表現していましたが、話を聞きながら、「ルル」は
男性を写す鏡のように思えてきました。
ルルの同性愛の恋人ゲシュヴィッツ伯爵令嬢も登場するので、男性だけではありません
が、「避けられない魅力に溺れていく姿」は、人間の本質を描いています。
当の「ルル」は、純粋なだけかもしれません。
理性を失っていく人々は、ルルの魅力に抵抗できない・・・
ルルと結婚する気がなかったシェーン博士も、結局のところ抵抗できなかった。
2月の公演に向けてのオペラトークを聞いて、あれこれ考えさせられました。