伊福部昭 音楽家の誕生
木部 与巴仁 (きべよはに) 著
412ページ 新潮社 (1997/05)
釧路町幣舞に生まれ、少年時代を音更村で過ごし、多感な青春時代を札幌で送った伊福部昭の生涯を描く。
興味深いのは、札幌時代の早坂文雄との関係。
伊福部は、北大の学生オケ(文武会管絃楽部)ではコンマスを努めたほどのバイオリンの腕前。
この頃には、兄・勲のためにギター曲を書いている。
札幌市内はあちこちで暮らしたが、一番長かったのは南十三条西十三丁目の家とのこと。
伊福部が住んでいた頃の札幌の描写が見事で当時の様子が目に浮かんでくるようだ。
1930年代の札幌を代表する名曲喫茶「ネヴォ(NEVO)」。
北二条西三丁目の時計台のすぐ近くにあった。
ここで、様々な新しい音楽を耳にする。
ストラヴィンスキーやドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」など。
壁には小林多喜二の色紙がかかっていた。
札幌市中央図書館で、調べてみると、NEVOはプロレタリアート関係者が集まる場所だった。(札幌資料室 『ネヴオの記』1930年代・札幌-文化運動の回想 佐藤八郎/著)
厚岸時代の林務官としての仕事、チェレプニン賞の受賞のいきさつや、チェレプニンからの横浜での直接指導など詳しく書かれている。
1934年にチェレプニンが札幌グランドホテルに滞在、札幌二中や藤高等女学校でもノーギャラで演奏会をやったことや、札幌滞在に接した人々のことなど・・・・
やはり北海道出身の作曲家ということで、読んでいて興味は尽きない。