元日の朝は、
ブルックナーの9番を聴く
というのが、30数年前からの儀式。
正月、自宅にいるときは、欠かさない習慣となっている。
きっかけは、シューリヒト&VPOのレコードをたまたま元日に聴いたら、
元日の雰囲気にぴったりな気がしたので、それが続いている。
考えてみると、壮麗な8番でもよさそうなものだが、
なぜ9番かといえば、厳かな感じがするからかもしれない。
正月が「厳か」なのは、いかにも日本的。
日本的な正月にブルックナーの9番を合わせてしまうのも強引だが、
そこは、まあ個人的な嗜好なので・・・
1楽章冒頭は初日の出のイメージ。
曲を聴きながらご来光を拝んでいるような気分になる。
Feierlich,Misterioso. 荘厳に 神秘的に
デモーニッシュなスケルツォは、トリオも高速で息つく暇がない。
Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell
3楽章 Adagio. Langsam, feierlich
盛り上がりも神秘的。最後は、祈るように終わる。
60分間、ちゃらちゃらした感じは全くない。
ここ数年、スクロヴァチェフスキの9番のCDで年が明けているが、
やはり聴きなれたシューリヒト&VPO版が元旦にはふさわしいような気もする。
スクロヴァチェフスキはN響定期で接しているが、
行った日の演奏曲はブルックナーでなかったのは惜しい。
9番を聴いたところで、休日でもあるし、全曲聴いてみることにした。
スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団の全集には、
交響曲へ短調、交響曲第0番ニ短調と、序曲ト短調、弦楽五重奏曲が収められている。
CD12枚。
交響曲へ短調は、習作であってブルックナーらしくないところが面白い。
ブルックナーを彷彿とさせる部分がなくはないが、別の作曲家の作風。
確かに"school work"というのが妥当。
0番は交響曲第1番の前に作曲されたのではなく、第1番と第2番の間の作品とのこと。
作曲者が自ら「お蔵入り」としてしまった曲だが、スケルツォなどはなかなかいい。
オットー・デッソフに「Wo ist denn da das Hauptthema? 第1主題はどこ?」
と質問され、出来栄えに自信をなくして「0」と数字をふったというエピソードが、
いかにもブルックナーらしい。
その後も、様々な意見を言われて過去の交響曲の改訂版を何度も出しているのだから・・。
1番は間違いなくブルックナーの作品。
1~2番はヨッフム版をよく聴いていたが、スクロヴァチェフスキのものもなかなかいい。
この2曲は、残念ながら実演に接する機会に恵まれていない。
3番以降は、いずれも実演で接している。
4番は2nd.Vnでステージに上がって演奏しているし、実演を聴く機会も最も多い。
6番はNHK交響楽団で一度だけ。
サヴァリッシュ指揮の6番をN響定期で聴いて、演奏の素晴らしさに興奮が醒めず、上気した気分のまま渋谷の公園通りを帰ったことを思い出す。
アマオケもうれしいことにブルックナーを取り上げてくれる機会もある。
3番は北海道交響楽団、7番はコバケンさん指揮の世田谷交響楽団、
9番は文京区民オーケストラで聴いている。
おかげで、ブルックナーを聴く機会が増えた。
特に道響の3番はありがたかった。
ということで、元日はブルックナー三昧。
通しで11時間半。
スクロヴァチェフスキのCD、購入してから数年たつが
2番、4番、8番は未開封だったので、
ちょうどよい機会だった。
9番から始めて8番で1周、
再び9番を聴いて、2順目。
フィナーレはどの曲もドカーンと盛り上がるが、
じっくりと聴きこむと、ブルックナーのアダージョはいずれも神々しい。