1984年2月21日のシンフォニア・タプカーラ
キングから出ているレコードは、「シンフォニア・タプカーラ」と「オホーツクの海」のみ収録です。
残念ながら「交響譚詩」は入っていません。CDの方には収録されていたんですね。
この日の演奏について、黛敏郎氏が解説に書いています。
このレコードのもととなった昭和59年2月21日、簡易保険ホールにおけるコンサートの劈頭、手塚幸紀氏の指揮による東京交響楽団の「交響譚詩」の最初のパッセージが流れ始めたとき、不覚にも私は、涙が滂沱と頬を伝って流れるのを禁じ得なかった。
かつてこの曲を初めて聴いた30数年前の若き日への追慕の涙であったかも知れない。しかしそれ以上に、あの音楽の持つ、人間存在の根源から揺さぶり起こすような、不思議な力とエネルギーに、眠っていた魂が呼び覚まされ、それが思わず涙となって噴出したのである。
こんな現代音楽が、他に果して存在するだろうか!私も死ぬまでにただの1ページでも良い、こんな音楽が書けたらなあ、作曲家冥利に尽きるだろうにと、つくづく思ったのである。
黛敏郎「伊福部先生の人と作品」(同レコード解説書より)